映画鑑賞ノート(2002-2003/04)

『サマー・オブ・サム』(2002米)

1977年当時のニューヨークのイタリア系ハーレムを舞台にして”サムの息子”事件騒動を描いたもの。センスのよい音楽とスタイリッシュな映像で一見オシャレな作品と見せかけて、実は厳しい社会批判をしているところがいかにもスパイク・リーだ。しかも、この作品はノスタルジックな雰囲気も強いので、そういう部分が鼻に付かない。元々そういうのが上手い人だったけど、その手腕が相変わらず見事なので嬉しくなってしまう。

外見が特異なために周囲から誤解されて孤立していく青年を今をときめくエイドリアン・ブロディが演じているのだが、「戦場のピアニスト」と全く印象が違うのに驚いた。だってイギリス帰りのパンク・ロッカーで生活費稼ぎのためにストリップで働いているという役柄なのだ。そんなに整った顔立ちだとは思わなかったけど、この映画であまりにセクシーなのでクラクラしてしまった。これなら主演のジョン・レグイザモよりモテそうに思えるのだが。あと、スパイク・リー自身も思わず笑ってしまうような役で出ていた。さすがスパイク・リー、こういうところがたまらない。唯一つ、この映画で残念だったのは私が野球に詳しくないこと。もし詳しかったらなぁ…という部分が随所にあったので。(2003/04)

『スパイダー/少年は蜘蛛にキスする』(2002仏・カナダ・英) 

心を病んだ一人の男が語る少年期の忌まわしい記憶…という触れ込みにふさわしいラストだった。しかし、この手の映画はネタバレせずに感想を述べるのが難しい。一度観ただけでは「えっ?」というラストなのだ。しかも、実はクローネンバーグを観るのは「ビデオドローム」以来なので、またああいう描写があったらと終始身構えていて、そのせいでいくつか細かい伏線を見逃しているかもしれない(ちなみにそういう場面がなくて、かなりホッとした。) うーん、やはりもう一度見直さないと、何にも言えないかも。

ただ、主演のレイフ・ファインズがとてもよかった。あの虚ろな眼差しは現在と過去が入り混じった複雑な構成のこの映画によく似合っていたと思う。(2003/04) 

『ぼくんち』(2002日)

どうしてあんなに面白い作品をこんなにつまらなくできるのだろうか。不思議でしょうがない。正直言ってあまりのひどさに憤りすら感じてしまった。この監督ならと思っていただけに残念である。とはいえ、実は予告の段階からなんとなくイヤな予感がしていたのけど…。とくに子役の一人が舌足らずで何を言っているのかよく分からなかったのが致命的。この作品では、こどもが重要な存在なだけにこれはツライ。逆に大人の俳優陣はとてもよかった。なかでも鳳蘭が印象的。原作よりキレイ過ぎるけど、原作に匹敵するほどの迫力があったので。(2003/04) 

『テルミン』(1993米)

テルミンという楽器は兼ねてから末永さんや成田さんから聞いていたけど、実はどういう楽器なのか実は全く理解してなかった。で、今回この映画を観て初めてどういう仕組みのものなのか理解した。そうかあ、なるほど、こういう風に自作もできるのね。これはトランジスターラジオ等を作っていた少年たちに人気があるのも分かるなあ。

それにしても、この楽器の発明者のテルミン博士の運命は悲劇的過ぎる。もっと違う時代に生まれていたら、どんな発明をしてくれたのだろうか。こういう才能を無駄なことに消費させるだなんて、なんてもったいないことをするのだろうか。(2003/04)

『リベリオン』(2002米)

この映画について何を語ればいいのやら…あまりにツッコミどころが満載過ぎてマトモな感想が全く思い浮かばないのだ。そもそも「戦争を防ぐために感情を持つことを禁ずる。そして感情を引き起こしそうなものは全て抹殺する」という設定自体が今更なんだかなあ・・・であるのに、体制側の人間である主人公がある出来事から体制に疑問を感じていくのだ。もうこの時点で大抵の人はラストを読めてしまうのでは?(笑) 

おまけに違反者を火刑(近未来だというのに)にする場面が出てくるけど、おそらく『華氏451』へのオマージュなんだろうけど、あれほどの美しさは当然なく、あまりの中途半端さにある意味泣けてしまう。

あと、この主人公の価値観はどうなっているのだろうか?さんざん人間を撃ち殺しておきながら犬が射殺される度に顔をしかめるのだ。極めつけなのは犬一匹のために警官隊を全滅させてしまったこと。そこまで人よりも犬を優先させるとは…。この瞬間、コイツはアイフルのオヤジを抜いたなと思った。いや、なまじっか強いだけアイフルのオヤジよりもタチ悪いかな(笑) (2003/04)

『X−men』(2000米)

周囲の評判はよくないので覚悟していたら予想に反して結構面白かった。なんといってもイアン・マッケランとパトリック・スチュアートがカッコいい。やっぱり上品な英国紳士の悪役はいいなあと惚れ惚れする。実はこれを勧めてくれた友人がこの作品を隠れたゲイ・ムービーと称していて、そういう目で見ると確かにそうかもしれないと思わせる要素がいっぱい。そういう意味で観ていてとても楽しい作品だった。しかし、こういう見方をする人は少ないよね(笑) (2003/04)

『抱擁』

久しぶりに自分好みの映画を観た。ああ、やっぱり私はこういう文芸物が好きだなあ。ヴィクトリア朝時代の詩人たちの知られざる恋愛を追っている現代の研究者たちがやがて恋に落ちると言う恋愛要素たっぷりの内容だけど、私としては詩人たちの生きよりも現在の研究者及びコレクターのほうが興味深かった。うーん、どこの国でもこういう人たちの生態は変わらないのね(笑) 

あと、ジュレミー・ノーザムが意外なぐらいコスチュームが似合っていたのも印象的。『カンパニー・マン』とあまりに印象が違うので気付かなかったけど、実はこういうのも似合う役者さんだったのね。(2003/04)

『オネーギンの恋文』(1999英)

原作を忠実に再現した雰囲気がとてもいい。風景にしろ、室内の細部にしろ、あの当時のロシアはこういう感じだったのだろうなと思わせてくれるので、ロシア文学好きには堪えられない。あと、リブ・タイラーの瑞々しい美しさも素晴らしかった。ただし、レイフ・ファインズの退廃的な感じは悪くはないけれど、もうちょっとロシア貴族らしさが欲しかったなあ。(2003/03)

『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002英・米)

007を観るのは久しぶり。主演が変わっても、時代が変わっても、ジェームズ・ボンドは変わらない。それが007というものだ……というのは頭では分かっているんだけど、ここまでやってくれると、やはり一言ぐらい何かを言いたくなる。えーと、いくらなんでもあの国にそんな科学力があるかなぁ??それと、これって御厨さと美『ルサルカは眠らない』と設定がよく似てるような気がするのだが…。だってハル・ベリー演じるジンクスってもろレッドフロアのイメージなんだもの。それとも他に元ネタがあるのだろうか?(2003/03)

『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(2002米)

シリーズの二作目、ちょうど真ん中の話ということで、たぶん分かりにくい展開かと思いきや、全くそんなことはなかった。前作もそうだったけど、これだけ壮大なスケールの話をキチンと分かりやすく描けるのだなんて本当にこの監督はスゴイ。それにしても、私はやっぱりこういう剣と魔法と騎士道の話って好きだなあ。観ていてワクワクするもの。登場人物達もみな無条件にカッコよくて悪役やクリーチャーまで惚れ惚れと見入ってしまう。ちなみに、今回のお気に入りは、ギムリとゴラム。この二人のおかげで深刻な話にメリハリがついたと思うから。ああ、早く次作の『王の帰還』が観たい!(2003/03)

『猟奇的な彼女』(2001韓国)

こういう話って観る前から大体の予測は付くけど、最後まで観るとやはり面白い。ただし、面白いと思えたのは最後まで観てからであって、前半だけだと、かなりキツイものを感じる。あまりにヒロインが乱暴過ぎて、そういうのが苦手な身にはただ不快でしかなかったからだ。内容も不自然な要素が多いし、もう少しいろいろと工夫してほしかった。とは言え、後半の盛り上げ方の上手さはなかなか。とくにあるシーンはさりげないけどドラマチックで、このためだけでも観た甲斐はあったと思う。(2003/03)

『戦場のピアニスト』(2002ポーランド・仏)

カンヌとアカデミーの受賞作に対して畏れ多いと思いつつ、あえて言わせてもらうなら、ホロコーストを扱った作品としては平凡な出来栄えだと思った。今の世界情勢を思うと、なぜこういう悲劇が起きたのかということをもっと訴えてほしかったのに、そんなことはなく、ただ悲惨な面ばかり強調されていているように見える。結局「夜と霧」以上の作品はないのだろうか。もっとも、私にはポランスキーはこういう政治的な話よりも不条理な恐怖を描くことのほうが上手い監督という意識があるせいかもしれないが。とにかくこの映画でよかったのは、主演のエイドリアン・ブロディとトーマス・クレッチマンの二人。後半、ブロディがピアノを弾き、クレッチマンが聴き入るシーンは屈指の名場面と言いたいぐらい素晴らしかった。(2003/03)

『アレックス』(2002仏)

間違いなく私にとって今年観た映画ワースト10入りになる作品。とにかく演出が生理的にイヤだった。ラストシーンから始まってオープニングで終わるという逆回しは興味深かったけど、見所はそれだけ。やたらとカメラをくるくる回し、観ていて乗り物酔いしそうな場面ばかり続いたかと思うと、残虐なシーンは必要以上に長いのだ。こういうのがいいと思う人もいるだろうけど、私は時間を無駄にしたという思いしかない。せめてもの救いは招待券で行ったことだけである。(2003/02)

『ふたりのトスカーナ』(2000伊)

作家の自伝的作品で、子供が主演で、第二次大戦末期を舞台にしていると聞いたら、もうそれだけで結末は予想できる。だから、この作品もある覚悟を決めて観に行ったのだが、意外なほど明るさに満ちた作品だった(といっても、ラストは重いが) 主演の女の子が一見大人しそうな優等生風なのに、実はお転婆娘なのがいい。イザベラ・ロッセリーニもD・リンチの作品に出ていた頃はエキセントリックなイメージだったのに、すっかり落ち着いていたのにはびっくりした。正統派の美人なので、こういう役はよく似合うと思う。またこんな役柄を演じて欲しい。(2003/02)

『キス・キス・バン・バン』(2000英)

観たという方が強く薦めるので観に行ったが、なるほどこれは面白かった。引退した元殺し屋と文字通りの箱入り息子の二人のやり取りを心温まる視点で写していくのだが、それが時にはコミカルであったり、ハラハラするものがあったりしながら、なんとも心地良いのだ。ラストには衝撃があるけれど、それも直接的な描写でなかったのもよかった。あと、元殺し屋の弟子を演じていたポール・ベタニーがものすごくいい。彼のためだけでもこの映画を観た甲斐があった。(2003/02) 

『エルミタージュ幻想』(2002露・独・日)

エルミタージュ美術館の中でロマノフ王朝300年の歴史をたどるというドキュメンタリーのようでそうじゃない不思議な構成の映画。エルミタージュ美術館内で撮影しているだけあって、前半は美術品の説明が多いが、後半になると歴史的な事実を忠実に再現している場面が登場し、まるでドラマを見ているようだった。歴代の皇帝の中でニコライ二世一家がとくに印象に残ったのは、その後の悲劇的な運命を知っているからだからだろうか。圧巻だったのは最後の舞踏会。帝政ロシアの文化の絢爛豪華さに思わず酔いしいれた。(2003/02)

『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002米)

予告があまりに面白かったので観に行ったのだが、予告のようなお笑いのノリはあまりなく、むしろとても真面目な内容だった。マイケル・ムーアはとにかく「どうして?」ということをとことん追求していくのだけど、そこに自分の感情をいれてないところがいい。だから観ている側も素直に「なぜ?」と思えるのだ。それにしてもすべてはボーリングであり、チャールトン・ヘストンの後姿なのだ。そういう現状に気が滅入るけど、この映画がカンヌやいろんなところで反響が大きかったことを思うと、まだ救いはあるのかもしれない――と思えた。(2003/02)

『黒蜥蜴』(1969日)

いやぁ、三輪明宏の華麗な演技にはただひれ伏すしかない。時々、男に見えるときがあるけれど、この迫力は女優では出せないかも。ところで、木村功ってあんなに館ひろしに似ていたのね。「七人の侍」にイメージしかなかったので愕然とした。あと、三島由紀夫の登場するシーン、隣にいた同伴者たちが笑っていたので釣られてしまったけど、やはり笑い所なのか?なんとなく三島由紀夫を笑うのは心理的に抵抗があるんだけどなあ…(2003/02)

『火山高』(2001韓国)

前評判が高かったので密かに期待していたのだが、今ひとつだった。なんというか、爽快感が足りないのだ。強いんだから我慢せずにとっとと闘えよ!といいたくなる場面がしょっちゅうあるんだもの。じれったくてイヤになってしまう。でも、剣道部の主将役のシン・ミナが凛としてカッコよかったので最後まで見入ってしまった。男装の美少女に弱い私です(^_^;) (2003/01)

『シベリア超特急3』(2002日)

前作の『シベリア超特急2』は実は結構面白かった。なんといっても、あの豪華な顔ぶれを観ているだけで嬉しくなる。多少(?)脚本に無理があっても、さすがの貫禄で乗り切ってくれるのだ。久しぶりに役者の力を感じさせてくれた。で、今回もきっとそういう風になるに違いないと思っていた――が、そうではなかった。これは正直いって映画館の大画面じゃなくてもいい。TVで十分だったかもしれない。といっても、TVで放映されるかどうかは分からない以上、映画館で観るしかないのだが…(2003/01)

『8人の女たち』(2002仏)

よくぞこのキャスティングでこんなストーリーを実現させたものだと思う。フランス映画ファンが身悶えするような女優ばかりではないか。しかも、全員歌ってくれるのだ。個人的には、ダニエル・ダリューの歌で泣いてしまった。ああ、「うたかたの戀」であんなに可憐だったあの女性が今もこんなに健在だなんて! あと、カトリーヌ・ドヌーブとファニー・アルダンのやり取りもいい。これはトリフォー・ファンとしては堪えられない。この監督は只者ではないという紹介があったけれど、まさしくその通りだと思う。(2003/01)

『カンパニー・マン』(2001米)

映像はスタイリッシュできっちり伏線を張りながら、物語は二転三転し、かなりミステリ仕立てになっているのだが、いかんせん肝心のストーリーに目新しさが今ひとつ…おそらく大抵のミステリファンンは中盤あたりからラストが読めてしまうだろう。(2003/01)

『アイリス』(2002英)

アイリス・マードックの評伝ということで観に行ったのだが、私的には一番描いてほしかった点があまり触れられていなかったので、あまり楽しめなかった。実在の作家を主人公とするのだから、もう少しその創作活動の根源みたいなものを見せてほしい。ましてや、マードックの場合、病魔に冒されながら執筆を続けたのだから、その意欲は半端なものではない。こういってはなんだけど、夫婦愛は他でも見れる。だからこそ、違う面が観たかった。(2003/01)

『恐怖畸形人間』(1969日)

さすが伝説のカルト映画。だって士方巽の魅力が満載なんだもの。喋る土方巽、恥らう土方巽、踊る土方巽(あ、これは当たり前か)、もうこれでもかというぐらい土方巽のあらゆる面を観れるのだ。それだけではなく、なんと小池朝雄の思わぬ姿もまでも拝見できてしまう。ああ、もうこの二人のこんな姿を拝めるだけでも、この映画は観るべき価値がある。(2002/11)

『ゴスフォード・パーク』(2001米)

これだけ登場人物が多いのに、どの人物にも個性がある。こういう群像劇をやらせるとアルトマンという人は天下一品だと思う。一見ミステリのように見せかけて実は違う話で落とすあたりの手腕もさすがとしかいいようがない。(2002/11) 

『ダーク・ブルー』(2001チェコ、英)

あまり期待せずに観に行ったのだが、予想以上によかった。なんで期待してなかったかというと予告編が今ひとつだったから(笑) 国を守るために戦ったのに報われない主人公の姿には泣けたけど、最後の笑顔に飛行気乗りの心意気を感じた。(2002/11) 

『ディナーラッシュ』(2001米)

これは今年一番面白かった映画。とにかくこのラストがいい。ややこしい人間関係を混雑した店内で繰り広げて、めまぐるしいなぁと思っていたら、こう締めくくるんだもの。お見事としかいいようがない。久しぶりに余韻が楽しい映画だった。(2002/11)

『メルシィ!人生』(2000仏)

ダニエル・オートュイユには渋いイメージがあるのでコメディができるとは思わなかったけど、結構似合っていた。というか、この人は好きなタイプの役者なので何を演じても許せてしまう。ホントはG・ドパルデューを目当てで行ったのだが、比べるとオートュイユのほうがいい。いや、あのマッチョなくせにヘンにナイーブな役柄はまさにドパルデューのオハコだけどね。(2002/10)

『シベリアの理髪師』(1999仏・露・伊・チェコ)

ニキータ・ミハルコフは最も好きな監督の一人だった。最初に観た『時計仕掛けのピアノのための』は今でも忘れられない。あの当時、ソ連という国でこれほど洗練された人がいるとは思わなかったからだ。その次の『愛の奴隷』も忘れがたい。繊細な表現が光るとても私好みな映画だった。

で、もってこれである。確かに、この人は甘い恋愛映画が上手い人であるけれど、さすがにこれはいただけない。だって「昔はよかったな〜」と愚痴をこぼしているだけなんだもの。ホントにあの時代はよかったのか? ロシア史を読んでみると、とてもそう思えないのだが…。 

この映画でとにかくよかったのは、オレグ・メンシコフ。ジュリア・オーモンドは今ひとつ運命の女という品格がないのがつらい。あと、番外の意味で似合っていたのは監督自ら演じた皇帝役かな。しかし、ここまでくりと単なるコスプレじゃないかと茶化したくなるけどね。(2002/10)

『オースティン・パワーズ・ゴールドメンバー』(2002米)

巨額な予算は多分冒頭で使い果たしたんだろうなというぐらいカッコいいオープニング。ああ、トム・クルーズって本当にいい男なんだと実感した(笑) それにしても、あちこちの有名作を限りなく下ネタでパロっていたのには大笑い。こういう映画は理屈で観ちゃいけないね。(2002/09)

『歌え!フィッシャーマン』(2001ノルウェー)

ひたすらおじいさんたちが元気に歌う映画。でも、その姿は見ているだけで心地いい。ちなみに、おじいさんたち、やたらと昔話(大体が女自慢)するんだけど、ちっとも枯れてないねぇ。これが長生きの秘訣? それはともかく、私が老人になったとき、なこんな明るい笑顔ができるといいなぁと切に思った。(2002/09)

『ル・ブレ』(2002仏)

友人に薦めで観にいったのだが、これは拾い物だった。さすがフレンチ、情け容赦なく殺しまくる。こんなのハリウッドじゃありえないのでは。しかし、やりたい放題というのはそれだけでとどまらず、終盤近くではなんとアフリカの遊牧民がカンフーをやるのだ。もう絶対にこれは監督が香港映画ファンなのに違いない。ヘタレな元看守とタフな脱走囚というコンビもよかった。(2002/08)

『ザ・ロイヤル・テネンバウム』(2001米)

天才ばかりのヘンな一家の物語。確かに変人ばかりだけど、これぐらいじゃちょっと物足りない。ヴォネガットのようなアイロニーとか、アーヴィングのようなほろ苦さが欲しいところ。でも、ジーン・ハックマンとアンジェリカ・ヒューストンの夫婦はさすがにインパクトがある。この両親だったら、どんな子供が生まれてもおかしくないもの。(2002/08)

『プレッジ』(2001米)

原作がフリードリッヒ・デュレンマットということで観にいったもの。あの地味な内容をどのように料理するのかと思っていたら、かなり忠実だったのには驚いた。しかし、この救いのなさはなんといったらいいのだろうか。風景が美しいだけに結末の苦さが染みる。ただ、原作で一番見たくないと思っていた場面が変更されていたのが唯一の救いだった。(2002/08)